暮らしの中の安全白書!それは何?

牛乳・・・やっぱりノンホモ・低温殺菌です

 ●欧米の牛乳がおいしい理由
 牛は4つの胃を持つ反すう動物なので、人間には消化できない牧草のような繊維質をいったん前胃(ルーメン)の微生物の栄養にしている。だから、牛のエサには繊維質の草が不可欠なのである。穀物のような濃厚飼料だけで飼うと、前胃が退化し、健康が損なわれる。
 牛は微生物を最後の胃で消化してタンパク質の形で吸収し、自らの血液に変え、さらに乳腺でミルクに変えて、子牛を育ててきた。人間がそのミルクを横取りして、食べ物にしてきたのである。
 遊牧の時代から人間は牛と共生し、牛乳をそのまま飲むか、チーズなどに加工して食べてきた。ミルクプラントで加熱殺菌して流通するようになったのは、近代に至ってからである。
 酪農先進国の人たちは、遊牧の歴史を踏まえているので、生乳の本質をそこねないような温和な加熱で伝染病を防ぐ方式を開発していた。それが、「パストゥリゼーション」である。
 一方、日本で市販されている一般の牛乳(市乳)の容器には、「超高温130℃・2秒殺菌」まどと表示されている。
 この「超高温」とはUHT(Ultra High Temperature)の訳語である。
 「超高温」でミルクを処理し、普通牛乳としている国は、酪農先進国には存在しない。
 アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなどを旅行した人から、「向こうの牛乳・乳製品がおいしかった」という話をよく聞く。日本の牛乳より中身が濃いのは乳牛の種類の違いにもよるが、そのさらりとした風味は加熱方式の違いによるものである。
 加熱方式の違い
 
アメリカやヨーロッパで一般に市販されている牛乳の容器には「パストゥリゼーション」と表示されている。近代微生物学の祖として著名なパスツールにちなむもので、「パスツール式の加熱方法」という意味である。
 WHO/FAOの要請に応え、国際的なただひとつの専門機関の国際乳業連盟(IDF)が牛乳の加熱方式について、その定義を明らかにしている。それによれば「パシトゥリゼーション=殺菌」と「ステアリライゼーション=減菌」は厳密に区別されている。
 パシトゥリゼーションとは、生乳の物理的・科学的・感応的変化を最小にし、病原微生物の危険性を最小にすることを目的とした加熱処理である。その加熱条件は「63℃、30分」、またが「72℃、15秒」いかではこれらを「パス殺菌」とよぶことにする。
 一方、ステアリライゼーションは、「100℃以上の熱を加え、すべての微生物を死滅させることを目的とする加熱処理」のことで、UHT加熱はこれにあたる。その加熱条件は「120〜145℃、2〜20秒」である。
 以上の基準に照らすと、日本で市販されているUHT殺菌牛乳は本来のパストゥリゼーションより加熱の度合いがはるかに大きい。すなわち、日本式UHT殺菌牛乳は、まず「75℃、6分」ぐらい予備加熱された後、「120〜130℃、2秒間」で本加熱されている。欧米でパストゥリゼーションと表示されている牛乳よりも、日本の牛乳ははるかに過度な過熱を受けていることになる。
 そのような結果を招いたのは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)にも大きな責任がある。それによれば、乳の加熱方法は「摂氏62度から65度で30分加熱殺菌するか、またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること」である。
その方法とは、
  @75℃で15分以上
  A120〜150℃で2秒以上(UHT法)
  B72℃以上で15秒以上(高温短時間殺菌法)というものである。
 つまり、ステアリライゼーションとパストゥリゼーションの2つの概念の違いを無視し、加熱の度合いが大きければ大きいほど衛生的で安全であるかの幻想を与えてきたわけである。
 しかし、飲み比べてみると、両者はまるで風味が異なる。その違いをカツオの調理にたとえ、筆者は次のように対比した。
 牛乳・・…刺身
 パス殺菌牛乳・・・・・タタキ
 UHT牛乳・・・・・なまり
 LL牛乳・・・・・カンヅメ
 UHT牛乳は危険だ
 
日本でひろく飲まれているUHT牛乳には、発ガン物質の過酸化水素が生成している。しかも、牛乳をカップに注ぎ蛍光灯のあたる部屋などにおいておくと、どんどん増える。一方、生乳やパス殺菌牛乳からは過酸化水素は一切検出されていない。
 その違いは次のカラクリによるものであった。生乳には過酸化水素を分解する酵素が含まれているのである。パス殺菌によっても酵素は活性を失わないことが確認されている。
 ところが、UHT牛乳の場合、過度な加熱によって生乳に自然に含まれている酵素が完全にそこなわれるために、過酸化水素ができても分解できない。その結果、過酸化水素が残留することになった。つまりUHT加熱によって自然に備わっている安全装置が壊されるのである。
 UHT牛乳を飲むと下痢をしたり、湿疹はできたりする人が少なくない。そのような人がパス殺菌牛乳を飲むjと下痢をしなくなったり、
アレルギーなどの症状が軽くなった、という報告をしばしば聞く。
 アジア人(日本人)は歴史的に牛乳を飲む習慣がなかったために、乳に含まれている乳糖を分解する酵素を持たないから下痢をするといわれてきた。そのような人のために大手乳業メーカーは、乳糖をあらかじめ分解した牛乳(加工乳)を売り出している。

 ● 「ノンホモ」「低温殺菌」を選ぼう
 
健康な牛の搾りたての新鮮なミルクを生で飲むと、サラリとして軽くおいしい。酪農先進国では、今日でもかなりの割合が生乳のまま流通している。しかし、日本では「乳等省令」で禁止されているので、一般の消費者が未処理の安い生乳を入手することはむずかしい。したがって、一般に入手できる加熱の度合いの少ない牛乳はパス殺菌牛乳ということになる。
 最近では、品質の良いノンホモのパス殺菌牛乳が増えてきている。表示に「ノンホモ」「低温殺菌」と表示されている牛乳は、一般に良質な原料を使っていることが多い。家庭の冷蔵庫で1週間ぐらい保存しておいても嫌なにおいが出ず、マイルドでおいしく飲めることが多い。

(高松 修)
 

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